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社会保障・社会保険のキーワードは「65歳」

現時点の年金制度において、男性では62歳から、女性では60歳から年金支給が開始されます。これは「特別支給の老齢厚生年金」と呼ばれるものです。しかし、なぜ「特別」なのでしょうか?それは、年金の本来支給が「65歳」と法律で定められているからです。なぜ65歳支給なのに、65歳前から支給されているのか?ですが、平成6年・平成12年改正により、「60歳引退社会」に代わる「65歳現役社会」の実現を目的として、年金制度にも変更が加えられたということです。いきなり制度を変えるのは、それを当てにしてこられた人々に酷な結果をもたらすので、徐々に変えていこうという考え方です。この65歳はあらゆる社会保障制度にも影響を与えておりまして、在職調整年金の支給調整金額は65歳前後で相違しますし、障害年金は基本65歳を経過しますと請求できなくなります、また雇用保険においては、65歳前は基本手当が支給されますが、65歳以後は高年齢求職者給付金が支給されるようになるなどは、その一例です。
なぜ、65歳で変化するのか?それは、この国の根本スピリットが「65歳でリタイア」することを前提に考えられているからにほかありません。なぜこうも扱いが違うのか?60歳を越して年金を受給する年齢になって初めて気づかれる方も多いと思いますが、この知識があれば右往左往することもなくなるのではないですか。

働きながらの年金

年金相談で最も多い質問事項が「働きながらの年金」、専門用語では「在職老齢年金」に関する質問です。働きながら年金をもらうと少なくなってしまう、という不正確な知識がまかり通っています。それは正確ではありません。働くといっても、いろいろな働き方が存在します。日常用語でいえば「正社員」で働くのか「パート・アルバイト」で働くのかの待遇の違いが左右します。正社員で働くとは、厚生年金に加入する、ということです。他方、パート・アルバイトで働くということは、厚生年金に加入しないという働き方です。厚生年金に加入するということは、在職調整の対象になるということであり、厚生年金に加入しない加入できないというのであれば、年金との調整は全くありません。厚生年金に加入しなければならない働き方というのは、例えば1日8時間労働で週5日ですと週40時間です。この40時間のうち、4分の3未満であれば厚生年金に加入しなくてもよいということですから、週30時間未満であれば加入しなくてもよいという話になります。(大企業の話は除く)厚生年金に加入するかしないかは、本人が決められるものではありません。勤め先との話し合いが必要になってくるでしょう。あるいは、ハローワーク等でお仕事をお探しの場合は、「社会保険加入」という文言に注意してください。
さて、厚生年金に加入するということ、サラリーマンになるということは、同時に標準報酬が定められるということです。標準報酬を持たないサラリーマンはおりません。そして、この標準報酬は自分で勝手に決められるものではありません。給与の話は、もちろん事業主とするのでしょうが、標準報酬の届け出(資格取得届)は会社が行います。
資格取得すると標準報酬が定まり、ようやく支給停止額計算の段階に入ってきます。支給停止の計算式は4つありますが、煩雑を避けるため一般の方は下記のみ覚えていて下されば支障はありません。
在職調整
上記でいいますと、例えば標準報酬24万円、年金月額6万円だとしますと、2万円がオーバーします。超えた2万円のうち半分の1万円は支給されます。越えた分の全額カットではありませんから。
(標準報酬24万円+年金月額6万円ー28万円)÷2=1万円(支給停止額)
よって、標準報酬24万円+年金支給額5万円(6万円ー1万円)=29万円が標準報酬と年金支給額の合計となります。あくまでも標準報酬額なので実支給額と勘違いされないようにお願いします。手取り額は、控除されているため、これよりも少ない金額になります。
よって、標準報酬が大幅に超えられている方は、年金は当然全額支給停止という事態が起こります。
余談ですが、標準報酬をいくらまで下げたら、年金との実収入は同じになるか?という質問も受けますが、上記式から同額になることはないということがお分かりになるでしょう。
在職支給停止のお話は以上です。なお、厚生年金は現在70歳まで加入

配偶者加給年金・振替加算について

配偶者加給年金と振替加算についての質問も多いです。配偶者加給年金についての説明です。配偶者加給年金が成立する図式は、一般的には以下の通りです。
ご主人:厚生年金加入期間20年以上
奥様 :厚生年金加入期間20年未満(中高齢特例は除く)
つまり、夫婦片方が厚生年金加入20年以上もう片方が厚生年金加入20年未満の場合にのみ、配偶者加給年金及び振替加算が付くのです。
加給
配偶者加給年金は、年額389,800円です。年間40万円近くになりますから、影響は大きいですよ。配偶者加給年金は、夫65歳到達時点から、妻が65歳に達するまで支給されます。妻が65歳になりますと、夫の加給年金はなくなり、妻に振替加算が支給されることになります。金額は同額ではなく、妻の生年月日によりけりです。つまり、配偶者加給年金と振替加算は表裏一体のものだということですね。
なお、妻が年上の場合は、夫が65歳に達したときに夫の年金の加給年金が付く間もなく、妻に振替加算が支給されることになります。上記図式は、夫と妻の年金期間が逆の場合でも、適用されることになります。
次に配偶者加給年金が支給されない場合を、説明しましょう。
加給ダメ
妻が、厚生年金加入期間20年以上持ちますと、配偶者加給年金及び振替加算は支給されなくなります。これは、そもそも配偶者加給年金には、「扶養」の意味合いがあり、妻も20年以上の厚生年金加入期間があれば、ある程度の十分な年金額は担保されているだろうという考え方に基づきます。夫婦共働きが多い昨今に当たっては、配偶者加給年金とは関係ないご夫婦もいらっしゃるということを覚えておきましょう。

遺族厚生年金について

遺族厚生年金に関する質問が年金事務所では、非常に多いです。ご主人が残される奥様のことを心配して聞きに来られるケースが多いです。今回は遺族厚生年金の基本を説明しましょう。
まず、年金の基本は、1階部分の老齢基礎年金と2階部分の老齢厚生年金とからなっております。老齢基礎年金は、「全国民共通の基礎年金」であるため、ご主人でも奥様でも必ず持っております。特に専業主婦である奥様に関しては、3号被保険者という形で加入しており、年金保険料の負担はないものの、納付したことと同様の年金が受けられることになっております。ちなみ老齢基礎年金の満額は、779,300円であり(40年間納付した場合、H29.4現在)男性でも女性でも金額が変わることはありません。さて、異なってくるのが厚生年金です。長い間サラリーマン生活を送っているご主人とわずか働いてあとは専業主婦である奥様とは老齢厚生年金額に雲泥の違いが生じてきます。ご主人が亡くなったことにより、ご主人が受給していた老齢厚生年金部分をすべて失うことは奥様にとって生活上厳しいものがあります。そこで、遺族厚生年金制度があるわけです。これは、ご主人が受給していた老齢厚生年金額の4分の3が奥様に支給されることになるのです。(下記参照)
遺族厚生年金の基本
注意いただきたいのは、ご主人の老齢厚生年金額4分の3のうち、奥様が自分の受給を受けている老齢厚生年金額は差し引かれるということです。このことから、夫婦共働きの時代に奥様がご主人の受給年金額を超えている場合は、遺族厚生年金が支給されることはありません。自分の年金額が多いわけですから。この場合は、逆に奥様に先立たれたご主人に遺族厚生年金が支給される可能性が出てきます。また、奥様の厚生年金加入期間が長くて、ご主人と近接している場合は、実際に支給される遺族厚生年金額は、わずかなものになってしまう可能性があります。
さらには、ご主人の年金加入期間によっては、「経過的寡婦加算」がつく場合もあり、非常に複雑です。
上記図は、65歳以上を想定しておりますが、基本的には65歳未満でも変わりません。
同窓会等で年金の話を多々されるとは思いますが、それぞれ皆様状況は異なります。聞きかじりの知識で年金事務所に来られる方が多いのです。基本をまず理解いただいて、人と比較することではなく、自分の年金はどうなのかを確認することが必要です。

障害年金について

老齢年金、遺族年金とコメントしてきました。次は、障害年金をコメントしましょう。
すでに、お分かりのように、年金は「老齢」「遺族」「障害」の3つを支給事由とする年金であり、これ以外の年金はありません。
「老齢」は生年月日により、支給事由が分かるものであり、戸籍や住民票に一目瞭然に記載されているものであります。今日において、「生年月日不詳」の方はまずおられないでしょう。
次に「遺族」ですが、これも「死亡診断書」等により一目瞭然に支給事由が判明するものであり、これも議論の余地はないでしょう。(失踪などの特殊事例は、ここでは割愛します)
さて、「障害」ですが、これも原則として「障害年金」の請求をしていただく必要はありますが、「障害状態」であることはどうやって認定するものでしょうか?「老齢」のように生年月日で一目瞭然に判別できるものでもなければ、「遺族」のように死亡診断書で一目瞭然に判別できるものでもありませんね。
そこで、世の中には医者と呼ばれる方たちがいます。この医師に「障害状態」であることを証明してもらおう、という話が出てきます。患者の主治医に「診断書」を書いてもらうという話が出てきます。
上記理由により、障害年金には「三種の神器」とも呼ぶべき3つの書類が必要になってきます。(私が勝手に命名しているもので公用語ではありません。念のため)
@診断書
A受診状況証明書
B病歴状況申立書

まず@診断書ですが、これは前述の通り、障害状況を確認するためものであり、全文医師が記載し、署名捺印するものです。よって主治医にお願いして書いていただく必要があります。まずは「診断書」がなければ障害年金は受給できないとお考え下さい。よく「医者に診断書を書いてもらえない」という相談を受けますが、なぜ書いてもらえないのか理由を問いただしましょう。医師にしてみれば、有料だし、書いても障害年金が支給されないことは感覚的に分かっているから、という理由が多いようです。「診断書」は症状に合わせて種類があり、所定の様式を使う必要があります。
A受診状況証明書ですが、病院が1か所で完結している場合は必要ありません。なぜなら、診断書に初診日は記載してあるからです。しかし、障害年金を請求される大多数の方は、病院をいくつか変わられているケースが多いため「最初」にかかった病院の証明書が必要になります。結構昔にさかのぼることも多く、多くの方は重要視しておらず、なぜこんなものが必要なのかという質問を受けるケースも多いのですが、障害年金は障害年金を支給する事由が生じた制度に請求することになっております。「初診日」に厚生年金に加入していれば「障害厚生年金」、国民年金に加入していれば「障害基礎年金」を受給することになります。障害厚生年金は、障害の程度により、1・2・3級まで存在しますが、障害基礎年金は1・2級しかありません。すると障害厚生年金3級であれば支給されるものが、障害基礎年金では支給されないという事態が起こります。そのため「初診日」が重要なのですね。さらには「初診日」とは「病名が確定した日」ではなく、」あくまで「体に異常を覚えて病院を訪れた日」だとお思いください。「受診状況証明書」も医師が記載します。そして、また、初診日は「保険料納付要件」とも重要な関係を持っております。
B病歴状況申立書ですが、上記2書は医師が書くものであり、請求者自身が記載するものではありません。よって、請求者自身が日々どのような不便を感じているか、病気の経緯を自分の言葉で書いていただけばよい、ということで「病歴状況申立書」が存在します。よく書けない、という相談を受けますが、決して名文を書こうとは思わず、日々の暮らしやで困っていることや経緯を自分の言葉で記載していただけばよいという書類です。気負わずにありのままを記載していただければ結構です。
障害年金の必要書類は上記三点のみではありませんが、代表的必須なものとして挙げさせていただきました。
どちらにしましても、障害年金の請求は「非常に煩雑」なため「社会保険労務士」の出番が多くなるということですね。お困りの場合は、お近くの社会保険労務士へご相談ください。

国民年金保険料は納めましょう!最低でも「免除申請」を!

今回は、厚生年金に加入している「第2号被保険者」の方たちの話ではなく、実際に国民年金保険料を納付しなければならない自営業者の方などの「第1号被保険者」の方たちに関するお話です。国民年金強制加入者には、これ以外に、サラリーマンの奥さんなどの「第3号被保険者」が存在します。ちなみに、「日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の方」はすべて国民年金に加入しなければならないため、日本に居住する外国人にも適用されます。60歳までは「強制加入」とされますが、よく60歳以後は?の質問を受けます。60歳以後会社員を辞めた(第2号被保険者)場合、国民年金に加入する必要はありません。ただし、40年の加入期間がない方は「任意加入」をすることができます。年金は、何もしなくて結構ですが、健康保険を、会社の健康保険に「任意継続」するのか、「国民健康保険」に加入するのか、を決めなければならないでしょう。ちなみに、厚生年金は70歳まで加入することができます。その分はもちろん後日、厚生年金額に反映することになります
さて、話を戻します。国民年金第1号被保険者は、国民年金保険料を納めなければなりません。現在であれば、月額16,490円です。第2号被保険者は、「給与天引」であるため、納め忘れという事態は想定されませんが、第1号被保険者は「口座引落」も含めて、自分で納付しなければ、年金額に反映されません。会社を退職後、納付が難しい時期もあるでしょう。そこで、国民年金保険料には、「一部免除制度」「全額免除制度」が存在します。これは、「全額免除」「4分の3免除」「半額免除」「4分の1免除」の4段階が存在します。
ここで、本論の核心です。全額免除と未納は共に被保険者が納付する保険料はゼロでありながら、発生する効果に違いが生じるのです。これは「年金制度」の支給額に税金が半分費やされていることと関係しているのです。老齢基礎年金満額779,300円を480月(40年)で割りますと約1,623円/年になります。ということは、月額16,490円の年金保険料を納めますと1,623円づつ年額で増えていくことになるわけです。月額で約135円です。単純に1,623円を1,600円で考えますと、このうち半分の800円は税金分の支給という内訳になるわけです。そして、全額免除であれば、この税金分の800円/年を受け取る権利は発生しますが、未納では、この800円を受け取ることはできない、という結論になります。
上記の話を、表で示すと以下のようになります。
 納付(16,490円/月)  1,600円/年増加
 4分の3納付 1,400円/年・増加
 半額納付  1,200円/年・増加
 4分の1納付  1,000円・増加
 全額免除  800円/年・増加
 未納  0円
こういう結果になりますので、「未納」と「全額免除」は根本的に違う、ということがお分かりになられたと思います。免除の手続きはどうしたらよいのか?それは「免除申請書」を提出すればよいのです。詳しくは、年金事務所・市役所にてお尋ねください。すべての方に「全額免除」が認められるわけではありませんが、少なくとも「未納」よりはましだということがお分かりになるでしょう。ちなみに、一部免除の場合でも、一部納付しなければ「未納」と同じ扱いになるという点にご留意ください。